
MIMOSA新春特別企画
ジャンピン人づくり対談
昨年、遅澤社長が東海バネ工業株式会社の豊岡神美台工場を訪れ、東海バネ工業の坪口幸弘専務と対談をいたしました。その模様が東海バネ社内報、Jumpin’に掲載されましたので、社員の皆さんにご紹介します。
東海バネ工業は、手作りのバネを作り続けて創業80年を迎えた企業です。多品種微量生産をモットーに、現在では、航空宇宙関連の最先端のバネも受注し、H3ロケットなどでも使用されています。単品のバネづくり精神は創業以来、今日でも脈々と続いています。

雑談やノリが
チームを
共創体質に変える
ゲスト 栃木レザー株式会社 遅澤 敦史 社長
東海バネ工業 坪口 幸弘専務
2024年7月、猛暑のなか「人づくり対談」のゲストにお迎えしたのは栃木レザーの遅澤社長。創立87年(栃木レザーに社名変更から20年)の革メーカーで、日本で数少ないタンニンなめし工法で革づくりを手がけられている。4年前に坪口専務が同社を視察させてもらったことを縁にお付き合いがはじまり、遅澤社長も今回で2度目のご来社。人がやらないものづくりという共通点を持ち、それぞれ100年企業目指している。それを牽引する視点で「人づくり」を語り合った。

遅澤:お久しぶりです。3年前、こちらを訪問させていただいた時は、私が先代から会社を引き継いだばかりでした。そんな自分に経営者としてやるべきことを示してくれたのは、その時に話を伺った御社の渡辺良機顧問です。あれだけ社員に寄り添った経営者にお会いしたのは初めてでした。jumpin’(東海バネ工業社内報)とはいきませんが、当社も1年前に社内報をスタートさせ、一人ひとりの従業員の想いを引き出し発信しています。自分にとってそれは教科書であり、常に社員の想いと向きあっているような感覚ですが、人づくりは一筋縄にはいきませんね。
坪口:製造業ですからものづくりがすべてです。価値をつくっているのも現場の人ですから、人を大切にすることは第一に置いています。外を見渡せば、利益追求が叫ばれているじゃないですか。それを求めれば、技術や姿勢は伝承されず、効率的なものづくりに流れてしまう。付加価値を生む会社であり続けるためにも、東海バネ工業では目指す人物像として「自律」を掲げています。
そこにいくまでには4つの段階があると思っていて、まず自尊があって、自分を発見させる自覚があって、評価して自信を持たせて、自適が生まれ、最終的に自らを律する自律へと成長します。一人ひとりの社員がどの段階にいるのかを見ないと、何が足りていて、何が足りていないのかがわかりません。不安な人には自信をつけさせ、自信がつくと自覚する。人の意見を聞き入れる人間になったら自由にさせ、自分で律するようになります。

坪口:3年ぐらい前に主任制度をつくったのですが、 管理職全員が1人の社員を評価して、平均点がある点数以上とれると主任として認められます。ヘルメットの色でその地位を区別していますが、彼らが主体になってものづくりを進めているんです。管理職はマネジメントに徹し、役割分担を明確にしている。それを導入してから現場は変わりました。下に浸透しやすくなりましたね。
遅澤:ヘルメットの色分けはいいですね。誇りを持てるし、責任を持つようになる。どれだけブレずにものづくりをするかですから。それはうちも導入したいですね。

伝統が崩れるときの個人ルール
遅澤:自分が重視したいのは「ノリ」なんです。ルールでがんじがらめにするとそのノリが生まれなくなる。だからそこは開放したいという気持が強くあります。それで、前期は管理職の成長期間と位置付けて、黙って見て口を出さないと決めていました。結果は、品質面にブレが生まれ、栃木レザーの個性が薄れてしまった。うちのお客様は長くお付き合いしている問屋さんですから敏感なんです。色味がどうとかではなく、パッと開いた瞬間が違うと。ブレの原因を追求すると、技術ではなく人、精神でした。先ほど言いました個人ルールです。それは、伝統をつないでいくなかでブレが出始めるのです。
先代はよく、「危険箇所は、工場内を歩いている時にわかる」と言っていました。そんな目で歩いていると、従業員の黄色信号の点滅が見えるんですね。それを見極めるのは、空気感とかちょっとした言動、目線といった肌感覚で、自分自身もその感覚を言語化できてない。そこが課題です。自分の経験値と職人の肌感覚を、どう会社の基準に合わせていくか。前期のブレで栃木レザーの幹が細くなったところを、今、太くしようと巻き直しているところです。
坪口:うちでもありますね。長く一つのところにいると、その人の基準になってしまう。それを生まないように導入したのが先ほどの主任制度です。ちょこっとミーティングやChatworkなどリアルな場、チャットを使ってのコミュニケーションも徹底しています。Chatworkは案件ごとにつくった部屋の中で社員がやりとりするんですが、知らないうちにチームがどんどん生まれてくるんです。
例えば、お困りのお客様をなんとかしたいという部屋があって、営業が何月何日までに出荷してほしいと書き込むと、管理職や工程管理のメンバーがそれを見て、「この辺に入れますよ」と返信する。納品後にお客さんからお礼のメールがあると、それをコピーしてチャットに貼り付ける。多くの従業員がそれを共有します。大阪と豊岡、豊岡のなかでも工場が3箇所に分かれていて、ともすれば顔を合わさない日もあります。だから、話しをする場づくりを徹底しています。

坪口:うちも結構ノリで進めていくことがあります。課題が大きいと逆にノリが良くなって、うまく進んだりします。一昔前の課題は、コイル、皿、板とみな自分たちが1番と思っているわけです。ある 新規品が入ってきて、3つの力が合わせさればできるはずなのに壁がある。でも、主任たち全員集めて、新規の獲得率を高める目標を与えると集まって協力するようになった。新規の獲得率が上がってきてますが、これもある意味ノリですね。
遅澤:ノリとか肌感覚とか、そういう抽象的なことをちゃんと言語化するためにも、さっきおっしゃっていたちょっとした隙間での会話が大事ですね。人で成り立っている会社である限り、そこがとても重要だと思います。
坪口:にぎやかな場は雑談や相談による相互理解、アイデアが生まれます。そうした環境は、様々な立場の人が協力して新たな価値を創造していくことにつながっていくのだと思います。お互い、このテーマは永遠ですね。
工場見学の説明を受ける同行の栃木レザー伊藤千恵課長(写真左)
