
3月12日Vol.058:配信
連載:社員インタビュー(毎週火・水・木配信)
第1話_渡辺 厚さん(施設課主任)

師匠の大場登美生さんに、機械のメンテナンスを学び始めて8年が経った。師匠の背中を追いながら、技術と精神を伝授させてもらっているが、自分はまだ道半ば。
もともと、1課で仕事をしていた。 そんななかで、定年を迎えることなった大場さんの後継者探しがはじまった。人を募集したが事情があって続かず、「やってみないか」と自分に声がかかった。面白そうに思えたので二つ返事で引き受けたものの、想像以上に難しく、弱気になるばかりだった。
そんな未熟な自分を見捨てず、指導してくれた大場さんのおかげで、少しづつ機械と向き合えるようになった。「よし、やれるとこまでやってみよう」とがむしゃらに進んだ。
茨城県の加工会社に25年ほど在籍し、溶接から機械のメンテナンスを任されていた大場さんは、会社が閉鎖となり、53歳くらいの時に栃木レザーに転職されたと聞く。その会社で使っていた機械の一部をうちの工場でも引き取っているので、大場さんにとっては長年寄り添った機械。子どもみたいなものかもしれない。
古い機械が多い栃木レザーで、工場を安全に、安定的に操業していくにはメンテナンスは欠かせない。すべては大場さんの経験と勘、手間(愛情)により、うちの機械はしっかりと仕事をしてくれている。機械のことを知れば知るほど、難易度の高い仕事。その大役、自分に果たせるだろうか・・・

3月13日Vol.059:配信
連載:社員インタビュー(毎週火・水・木配信)
第2話_渡辺 厚さん(施設課主任)

古い機械が鎮座している栃木レザーの工場。トラブルは、いつも突然やってくる。一番古い機械は50年くらい前のもの、何があっても不思議ではない。
大変なのは、修理するにしても旧式の機械部品はほとんどが製造中止。特注でつくってもらうのだが、それでさえ、引き受けてくれる町工場は減るばかり。どこも職人さんの引退で、つくれる人がいない。
規模の大きい工場に依頼すれば順番待ち。工場の製造を止めるわけにはいかないので、結局、自分でつくるしかない。
一番手ごわいのは、脂を落としたり、回転する機械や皮を運ぶ天井のクレーン。特に1課の水場で使うものは錆びや腐食が多く、電気関係のトラブルは日常茶飯事だ。ここは薬品を使ったり、湿度の関係で、基板がダメになってしまう。
昔からお願いしている電気関係の人もご年配。いつまでも頼るわけにいかず、電気図面を読める人が今年から新しく仲間入りした。お互い勉強しながらメンテナンスに取り組んでいるところだ。
皮革業界の縮小と比例するように、この分野の機械メーカーも縮小傾向にある。その現実を目の当たりにしながら、どう機械を維持していくべきか。メンテナンス技術だけを身につければいいというものでもなく、機械を新しくすればいいという単純な話しでもない。そこには、常に人が関係してくる。

3月14日Vol.060:配信
連載:社員インタビュー(毎週火・水・木配信)
第3話_渡辺 厚さん(施設課主任)

栃木レザーには、1課から4課までざっと50以上の機械が所狭しと並んでいる。それぞれの機械の機能や動作を理解しないと、機械も電気もいじることはできない。
昔の機械は、新しいものに比べてとにかく構造がシンプルで頑丈。モーターなんか、少しくらい無理をしても焼けつくことなくしっかり動く。
うちの業界のものに限らず、今の新しい機械の中身は電子部品がぎっしり詰まった基板が何枚もあって、構成自体が違う。軽くて低コストになった分、多少の弱さは否めない。
古い機械と仕事をするということはそれなりの苦労は伴うけど、古さ故の良さ、価値を感じることができるのも面白い。
そういった新旧の機械があるなかで、自分のやるべきことは、全ての機械をひっくるめて知ること。止まったとか、壊れたとか、部品をつくってくれといった相談に応えるには、各工程の仕事内容、工程を理解し、どういう風に機械を使っているのかを見なければ。
機械だけではない。現場で機械を使う人と会話しながら、その人の癖や性格も把握する。手荒く使う癖があるとか、無茶なことするとか、突然電気を切っちゃうとか・・・色々ある。
修理するだけではない。機械を知り、人を見る。それも、自分の大事な仕事だ。

3月19日Vol.062:配信
連載:社員インタビュー(毎週火・水・木配信)
第4話_渡辺 厚さん(施設課主任)

機械の故障で生産を止めない。これは、私が死守しなければならないこと。だからといって、無理に稼働させて怪我でもしたら元も子もない。その辺を見極める勘と経験も身につけなければいけない。
機械が故障する前は、必ずなんらかの兆候がある。臭いや音、振動、いつもと違ったものを感じたら、要注意だ。
故障って、ほとんどの原因が人。機械に嫌われる人の大半は、機械への思いやりが少しかけているかな。その人は丁寧に扱っているつもりでも、実はそうでもない。
何度も同じことを繰り返す人、操作の説明を聞いているようで聞いていない人、正しい操作や手順を飛ばす人・・・焦って機械を操作すると、手荒くなったり、やってはいけないことをやったりする。そんな時は、みんなに迷惑をかけることを伝える。
「修理代もかかるし、この工程がストップしたら予定の売上げが立たず、みんなの給与とかボーナスに影響するよ」と。
これも大場さんに教えられたこと。すべての機械を十分に理解していない私が言うのもおこがましいけど、教育というか、使い方の指導は大事かな。
そんななかで、思うことがある。日頃の基本メンテナンスは、使用する人の責任で空いた時間にやることになっているけれど、そうではなく、1日10分でもいいから強制的にメンテナンス専用時間を設けたい。そうすれば必ず、トラブルは減る。
機械も人間も同じ。相手を大事に思う気持はちゃんと伝わり、雑に扱えば機嫌を損ねる。上手く付き合えばより長持ちする。機械にも命は宿っているから。

3月21日Vol.063:配信
連載:社員インタビュー(毎週火・水・木配信)
第5話_渡辺 厚さん(施設課主任)

工場内を歩けば、大場さんとつくったものがあちこちに設置してある。例えば、皮を運ぶコンベア。それまで人が持って架けていたのを、ボタン一つ機械で運べるようにした。職人さんに打ってもらった土間の上につくった乾燥室や、革を柔らかくする小さなドラムなど。大場さんが設計して、私が溶接をする。
1から全部自分でつくったのは排水設備に有るスクリーン用の小屋。通称メンテナンス基地。やはり物つくりは楽しいね。最近、あまりつくりものがないから淋しい。やっぱり、ものづくりがしたい。
今、工場改築の話しが進んでいる。我々のものづくりの現場は、どんな変化をとげるのだろう。伝統も大事だけど、新しいものをどんどん取り入れないと、お客さんに飽きられてしまうんじゃないかな。
栃木レザーの硬い革の風合いの良さも守りながら、栃木レザーの未来のために、新しいことをやりたい。
それにはみんなの頑張りが必要。いつもと同じ作業をやってた方が楽だし、文句を言う人がいるかもしれないけど、なんとなく働くという意識を、積極的に目指すものを見て働く方向にチェンジする時じゃないかな。
私は製造の人間ではないけれど、作業効率が上がるものが自分のアイデアでつくれるなら挑戦したい。使いやすく、安全な機械環境を。

3月22日Vol.064:配信
連載:社員インタビュー(毎週火・水・木配信)
第6話_渡辺 厚さん(施設課主任)

師匠の大場さんに出会えて良かった。厳しいけど、人生を学びながら、技術も学ばせてもらった。「俺はもう70になるから引退していいいかな」と大場さんは言うけど、ここに居てくれるだけで心強い。
私は、主張する人間ではなく、空気のように邪魔をしない、でもなければならない存在でありたい。あまり頼りにされ過ぎても困るけど。みんなが基本メンテナンスを理解すれば、私を頼る必要はない。私が暇なのが一番、いい状態ということ。
子供の頃から、車とかバイクをいじるのが好きだった。だから、機械に興味が湧いたのかな。前職は農業に携わり、イチゴなどを作っていたけど、笑。
栃木レザーに入社して1年くらいした時、1課に靴つくりの専門学校を卒業した先輩がいて、一緒に仕事をしていた時期があった。彼に教えてもらいながら、木型からおこして靴をつくったことがある。
彼はやっぱりものづくりがしたいと、会社を去ってしまった。その時つくっていた靴は、ソールの部分を縫う完成の一歩手前で、置いてある。その彼と再会する時に、完成させてもっていこうと決めているから。
でも、本当は完成させたくないっていう気持がある。そこには、希望とか未来があるから。完成させてしまうと、それらも消えてしまいそうになる。
もう少し、未完成なままで。
