今週の社員インタビューは製品課の桑垣さん。PARADOX という自身のクラフト工房を持ちながら、栃木レザーで働いています。生きる支えは、10代からやり続けているギターだとか。音楽と革づくりで自己表現をする桑垣さんの人生に触れてみました。

7月7日Vol.198
社員インタビュー
第1話_桑垣 健太さん(製品課)

ミュージシャン目指して上京!

早いもので、栃木にきて7年が経った。故郷の山口を離れたのが18歳の時。プロのギタリストを目指して上京したあの頃が懐かしい。

ギターにはまったのは中学2年くらい。ピアノをやっていたからクラシックを聞いていたけど、ロックを耳にしたとき一気に引き込まれた。それから四六時中ギターのことばかり考え、時間があれば練習。ただただ、ギターのこと、音楽のことを知りたかった。

高校を卒業して、東京にあるESPという音楽や楽器製作の専門学校に入った。そこを出てからはフリーターを4、5年経験して、ヤマハに入社した。

「楽しい」「知りたい」「好き」

楽器店にヤマハの楽器を配送する仕事で、自分の担当エリアは新宿と池袋。配送とは言え、色んな楽器店に行けるのは、ギター好きの自分にとって夢のような時間。店に並んでいる楽器を見るだけで心が弾んだ。この頃が一番、楽しかったかな。

配送の仕事をしながら夜は音楽活動。その時からバンドではなく、ジャムセッションに興味を持っていた。音楽好きが集まって、楽譜やアレンジにとらわれず即興で演奏するジャムセッションは、 新しいフレーズを探したり、一緒に演奏するミュージシャンとの阿吽の呼吸、そして感性に合ったアレンジを見つけたりするのがめちゃくちゃ面白い。

ものづくりの世界へ

一方、ヤハマで仕事をしながら、手に職をつけようとはじめたのがシルバーアクセサリーづくり。ネイティブアメリカン系が流行っていた時代で、異文化の個性を表現するツールとして、若者に受け入れられていた。その流行にのった。

東京ビックサイトで毎年開催されるデザインフェスタに出てみようと、彫金仲間と申し込んでみた。出展が決まり、意気揚々とフェスタに乗り込むと、そこらじゅうがシルバーアクセサリーのブース!

さて、どうしたものか。

7月8日Vol.199
社員インタビュー
第2話_桑垣 健太さん(製品課)

レザーの道を切り拓く!

「誰もやっていないものづくりがしたい」
シルバーアクセサリー分野の熾烈な競争を知った時、ふと目を向けたのが革の世界だった。もともと、革に興味を持っていた。好機逸すべからずと、当時住んでいた隣町にクラフト教室を見つけて通い始めた。

技術を習得しながら小物づくりに手応えを感じ、「革一本でやっていこう」と決心。これがレザーの始まり。

相棒のギターと革に携わるなか、色々なことが重なって、「東京を出たい」と思うようになった。かといって、山口に戻るのは違う。

そんな時、出会ったのが今のかみさん。福祉関係の施設で働く指導員で、自分のものづくりと道は違うけど、「音楽」が共通の趣味だった。

出会ってから半年後に結婚し、彼女の住むこの栃木に来たのが2018年。自宅にちょっとした工房をつくり、「PARADOX LEATHER」という屋号でクラフトの受注生産をスタートさせた。

つながり、影響、剌激の場

かみさんのすすめで青年会議所のメンバーにもなった。それまで異業種との交流とか、街づくりとか、考えたこともなかった。栃木のことを何も知らない他県からきた自分を快く受け入れてもらい、多くのつながりを持つことができた。

しがらみのないなかで同世代と目標に向かって活動するのは、すごく貴重な経験。他業種の経営者との付き合いで新たな世界を知り、視野を広げる、そんな場だった。

しかし、革で一本立ちするまでにはいかず、アルバイトをしながらの日々。そんな時、かみさんのつながりで仕事を紹介してもらうことになった。その担当者が総務の伊藤千恵さん。

「えっ、なんとあの栃木レザー!」

7月9日Vol.200
社員インタビュー
第3話_桑垣 健太さん(製品課)

自分はやっぱり、職人

革を生業にしているものにとって、栃木レザーは特別な存在。こんな巡り合わせがあるとは思ってもみなかった。早速、工場を見学させてもらい、特有の匂いに少し驚きながらも、入社が決まった。

配属先は、アンテナショップの販売員。ものづくりをやらせてもらえると勝手に期待していただけに、戸惑いながら店に立つこととなった。

これまでも、栃木市のイベントに参加して、PARADOX として自身の商品をブースで紹介する経験はしていたが、売ることなど考えてもいなかった。革好きに、世の中に一つしかない小物づくりの価値を伝えたい・・・それが、オーダーにつながればという想いだけで参加していた。

実際、アンテナショップに立っていた自分の販売実績は、褒められたものではなかった。どうしてもつくり手目線になってしまい、つい、革へのこだわりを語ってしまう。ただ、大事に長く使ってもらいたい、革の価値を伝えたい・・・そう思っていただけ。でもそんなこだわりなんて、すぐに数字にはつながらない。

店としては、当然、売上を伸ばしたいわけで、自分のような職人目線には、厳しい場所だった。売上も大事、革の良さを語るのも大事。そのバランス感覚が重要なんだと、日々学ばせてもらった。

しかし、このバランス感覚は、この先もなかなか身につかないのである(汗)。

7月10日Vol.201
社員インタビュー
第4話_桑垣 健太さん(製品課)

ROCKな生き方

ショップで学んだバランス感覚を生かしきれていないことを、自分のものづくりから痛感している。こだわりが強く、どうしても制作時間がかかってしまう。

その時間を価格に反映させられず、つくっても、つくっても財政難から抜け出せない!東京にいたときから、会社員を続けながら取り組んできたのは、そうした理由から。ずっと二足のわらじ。

じゃ、音楽を趣味に会社員として生きていけばいいのに、と言われそうだが、ものづくりと音楽は、自分が生きていくために必要なもの。だから、やめられない。

ギターは、どんなに忙しくても毎日音を出す。10分でも弾けば、気持が落ち着く。音楽は自分の背骨。

ものづくりは、物語をつくっているようなもの。自分の手で何かを生み出す過程で、つくる楽しさ、ものを大切にする心を感じ、届けた先の物語を創造する。だから、なくてはならない。

伝統を追い求めて

革の小物づくりは、シルバーアクセサリーの時からやっていた、ネイティブアメリカンの文様をカービングするのが一つの特徴。そのモチーフは、単なる装飾ではなく、文化的背景や精神的な意味が込められている。つくり手、つかい手の価値観や美学を表現するシンボルのようなもの。

自分が追い求めてきたものは、伝統かな。文様をカービングするのも、神社に足を運び、神々が宿る場所やIconに惹きつけられるのも、文化や信仰を反映し、継承していくものに心を揺さぶられるから。

ギターも、ROCKという、価値観や表現方法というある意味、伝統を受け継ぐ一人に、いや、伝統をぶち壊すROCKERになりたかったのかもしれない。

音楽も、革づくりも、伝統に加えるのは「自分らしさ」。それが、一体化したとき、どこにもないROCKな世界=「PARADOX」が生まれるのかな。ちなみに、PARADOXを直訳すると逆説。

7月11日Vol.202
社員インタビュー
第5話_桑垣 健太さん(製品課)

一本立ちを志して

栃木レザーに入社して6年くらいが経った。今は、逆井課長のもと、製品課で革の仕上げに携わる。クラフト教室の依頼があれば、講師業もやらせてもらう。

PARADOX の活動は、ありがたいことに社長から後押しもしてもらっている。栃木に来てまだ7年ほどなのに、会社、青年会議所でのつながり、そしてかみさんの支えや応援があって、ものづくりの環境は少しづつ整ってきた。

そんな人生を振り返り、今、あらためて思うのは、革の世界で一本立ちすること。それを成し遂げなければ。

人材の魅力

ところで、社内報Mimosaを読んでいると、栃木レザーには個性的で面白い人材が山ほどいる。そうした人たちと、もっと話してみたい。昨年、食事会とボーリング大会を開催してもらったけど、なかなか課を飛び越えて話しをする雰囲気がなく・・・(残念)

職人気質というのがあるのかもしれないけど、前に出ていく人は少ない印象がある。自分も根っ子は引っ込みじあんだけど、音楽をやり始めてからは、自然に前に出られるようになった。一歩踏み出すと見える景色が変わる。

だからユニークな人材が集まって、語り合えば、ものづくりの価値あげるアイデアも生まれるのでは。そんな仲間たちで、栃木レザーを盛り上げてみたい!